「橙」 一覧
「陽があたると、やさしくなれると思う。」
「陽があたると、やさしくなれると思う。」
カテゴリ一覧
オレンジやピンクのコスモスの
揺れる川沿いの道をゆっくりと歩いた。
傾き始めた日差しは川に反射し
揺らめく光がきらりきらりと輝いた。
ずっと先まで行けば
彼岸花が赤く道を彩っていて
すすきはやさしく揺れていた。
ある日照りが強い頃、
夢中になって打ち込んでいた。
それは楽しくて仕方がなくて
出来上がったら嬉しくて
幸せで溢れていて
雨が降っていた頃は
よく出来上がった後のことばかり
考えて誰もが振り向いてくれることを
願って願い続けて
結果ばかり見て落ち込んでいた。
ある日照りが強い頃、
そこに少しの涼やかな風が運んで
秋の気配を感じた。
気温も下がれば
陽気なステップでまた踊れるだろうか、
そっと素足を一歩前に出せば
初めの頃の私が楽しそうに夢中になって
打ち込んでいる姿があって
瞼を閉じた。
ある雨上がりの頃、
虹が淡くかかって
ぼんやりとだが、少し歩いていけるような気がした。
まだぼんやりとだが、頑張れる気がした。
虹はかかっていてもまだ雨は止まないが、
きっと次第に晴れるだろう。
ある日照りが強い頃、
夢中になって打ち込んでいた。
それは楽しくて仕方がなくて
出来上がったら嬉しくて
幸せで溢れていた。
重ねていく季節の中で
荒んだ心は癒えていくのであった。
それは、人と人が紡ぎだす
“心を通わせること”。
秋なのに安らかな顔をして
風景は明るい光に包まれていて
葛藤した日々を越えていく。
涼やかな風が教えてくれる。
次はこうしていこうって
君はたおやかに風を仰ぎ
私は右手と、左手を広げた。
それは翼のように
今ならどんなことも
ひっぱられないでいた。
季節の移ろいは早いもので
あれほどに積もった雪も地面が見え始めて
濡れた道は春を感じさせた。
雪解けの匂いは故郷を思い出させてくれる。
やがて身体は動くようになり
心は軽くなるだろう。
幾度も願った、春が訪れてほしいと。
豪雨だ。ピシャリピシャリと
打ち付けて。雷も鳴っている。
思い通りにはいかなくて。
吊るされたように
まるで身動きが取れなくなっていた。
「だけれどそれは、あなたが
表したいことを
表したい方法で
表していかないからだ。」
秋の初め頃、気がついたように
走り出していった。
失ったこと、置いてきたこと、
また、表すために
風に乗って、山吹色の稲穂畑が
連なる上をまっすぐと
思うがままに飛んでいくのだ。
薄く色付いた紅色やオレンジ色のあの日々が
いつまでも自分を苦しめた。
跳ねてもぐんぐんと走っても平気だった頃、
何色にだって染まって私は何も知らないまま過ごした。
幾つも春が過ぎて夏も過ぎて
明日も明後日も過ぎて気が付けばまた春に戻った。
いつまでも苦しめた。
今日、この場所で瞼を開けていたら
あの日々を重ねていた。
同じようで全然違う、だけれど何重にも
あの日々を忘れるぐらいに
色は重なって濃くなって、
本当に幸せだった。
心の中で熱は冷めなかった、
怒りさえも気付けなかった。
夢の中でわたしは拳を上げる、
君は泣きそうな顔をしながら
笑顔で、わたしの矛先を受けた。
あの時上手に怒りを燃やしきっていれば
時が随分経ったとしても
こんな風に、むなしい朝は来なかっただろう。
Copyright© 君の音。 | 真島こころ公式ウェブサイト , 2024 AllRights Reserved.