熱情は囁く
2023/05/02


風が吹いていた。
確かな風だ。
それは夜のこと。
街灯の少ない道路をカーブする。
信号機が点滅する。
人は歩いていないけれど、
スーパーの明かりが付いていた。
車窓から見える風景の中で
確かな風が吹き付けてきた。
それは、願っていた風だ。
幾度も感動したから
あまりよく覚えていないんだって
きっと訳のわからないぐらい
苦しかったからだって
私はそう笑って
一面に水が張られた田んぼの景色を
助手席に乗りながら通り過ぎていく。
熱情は冷めなかった。
放出した力で身体は燃え滾っていた。
苦しむほどに熱く
悔しむほどに問いかけた、
掻きむしるほど情けない姿で叫んだ、
だからこの風が
あまりにも涼やかで
あまりにも確かだと
そう、思ったんだ。
例えそれが呪いになっても
2022/12/05


幸せでいる日々が全てを忘れさせていた。
"いくら絶望をしても
這いつくばって駆け上がってきた。"
別に、綺麗に整わなくたって
よかったんだ。
よいものを作らなくたって、
よかったんだ。
絶望の淵から必死で必死で
繋いでた綱をまた掴んで
傷だらけになって
苦笑いして
叫んで
そうやって生きてきた。
そのことを思い出せば
何だって身を犠牲にしても
例えそれが呪いのように思えても
何だって出来たでしょう。
出来ないことなんてないって
そう笑った私は忘れてしまっていた。
必死で真心で本気で情熱をかけて
走っていくことを。
目が覚めたなら
何をしていくかわかる。
少し考えることがあれば手や足を動かせば
無駄になんてならない。
手や足を動かし続けて作り続けていく。
それは決して綺麗なものではない、
ガラクタたちだ。
でも私の愛するモノたちだ。
落ち葉舞い落ちるまで踊り続けましょう
2022/11/23


照らされた紅葉の隙間から溢れる光。
飛行機雲がすいーっと伸びて
もう何も悩まなくていいんだと思った。
空は高く雲は淡く
湖は波を打って風に吹かれていた。
何よりも負けない心があるなら
もう怖いものなんてないでしょう。
一歩足を伸ばして
右手をしなやかに手先まで伸ばし
くるりくるりと
私は踊りながら笑った。
それはもう滑稽な姿ではない。
力強く自分を信じている。
野花は噛み締めた ver.song
2022/10/26


きっと、純粋な気持ちだったんだ。
うまく、いくんだって
頑張れば、がむしゃらでも頑張っていけば
なんでも光を浴びれるって
そう、過信していただけだ。
思い通りにいかなくて
空き缶を蹴ったらその空き缶は
どこまでも飛んで行って
何度も空き缶を蹴って
どこまでもどこまでも飛ばしてしまった。
やりたいことや求めることは何一つ
かえってこなくて
思い通りにいかないことのほうがほとんどなのだ。
きっと、純粋な気持ちだったんだ。
うまく、いくんだって
頑張れば、がむしゃらでも頑張っていけば
なんでも光を浴びれるって
そう過信していただけだ。
秋の翼をはためかせて
2022/10/04


重ねていく季節の中で
荒んだ心は癒えていくのであった。
それは、人と人が紡ぎだす
“心を通わせること”。
秋なのに安らかな顔をして
風景は明るい光に包まれていて
葛藤した日々を越えていく。
涼やかな風が教えてくれる。
次はこうしていこうって
君はたおやかに風を仰ぎ
私は右手と、左手を広げた。
それは翼のように
今ならどんなことも
ひっぱられないでいた。