「mono」 一覧
「はじまりと、おわり、どちらのほうがかなしいかなって。」
「はじまりと、おわり、どちらのほうがかなしいかなって。」
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掻き毟りたいほどに頭をぐしゃぐしゃにして
爪をぐちゃぐちゃにし
息もできないぐらいに胸も気道も喉もおかしいのに
なぜだか、なぜだか確かな光の数々が
目の前で次々と降ってきた。
ここまで来るのに歩いた道は
でこぼこで大きな穴は開いてるし
何度も落っこちて怪我だらけだし
何度も泣いて叫んで苦しくて体中掻きむしって
もうこのまま動けなくてもいい、って
全てを投げ捨てようとしたことだってある。
でもなぜだかずっと前に、前に、
足を動かし、手を動かし続け、
命を削って、削って、削って、
削り続けて、
乾いた笑顔でにこにこして
まだ大丈夫だ、まだ大丈夫だって
壊れた形で壊れたまま
それはもうがむしゃらだ、
何度だって怪我をして体中を掻きむしって
ただただ、あの光の中に
また行きたいって
信じ続けた。
信じた。
あの光の中にいたことがあったから
あの光が忘れられないから
倒れそうでも立っていた、
笑顔で、笑顔で
い続けた。
まだ大丈夫だ、まだ大丈夫だって
体が動くまで、倒れるまで
息ができなくなるまで
燃えたぎっていた、
それはある意味壊れていただろう、
言葉にならなくて、
言葉に、ならなくて
言葉に……ならなかった。
光の岩が沢山降ってきた。
まるで痛いぐらいにまばゆいひかり。
眩しすぎて声が途切れて
だんだんしゃべれなくなった。
でも、楽しい、でも楽しい、楽しい、楽しい、
楽しいんだ……
気がついたら、また歩いていた。
気がついたら、また手を動かしてた。
気がついたら、またここにいた。
気がついたら、またここにいた。
街の喧騒が今は嘘みたいだ。
ネオンが揺らめく世界から一変、
静寂の中であなたとお別れしている。
言葉がいくつも降りかかって
必死に自分を保っている。
街の喧騒が嘘みたいだ。
ロープウェイで見ていた景色のように
ひとも世界も変わり続ける。
変わらないのはずっと自分だ。
自分だけが変わらなくて
世界はこんなにも変わっていく。
あなただって、また会う時には
変わるのでしょう?
手のしわが増えて、やがて華奢になっていくのでしょう。
それは止めることができなくて
悔しかった。
汽笛が鳴って新幹線に飛び乗った。
帰らなきゃ。
真っ直ぐに見れない世界がそこにはあった。
外はどしゃぶりだ。両手いっぱいに
抱えた荷物に体は応えながら
モノレールへと飛び乗った。
外は湿気があるが冷ややかな風が
換気をしている車両の窓から
ひゅるららと吹いて汗ばんだ身体を癒してくれた。
「風、気持ちいいね」
どうしてだろう、雨の中、
東京の景色が空気は汚れていても
沢山のビルが並んで喧騒していても
美しい風景に心留めていた。
幾度に願った。
ここにまた来て沢山の人と関わることを。
幾度も夢見た。
こうしてまた来て、雨の中の
モノレールでもう何も車内の喧騒は聞こえず
ただただ、雨の街並みに見とれていた。
水分の沢山含んだ雪が
降り続ける。ざわざわとうねり始める
その世界でその色に染まらないように
ただ自分の信念を曲げないようにして
手を動かし始めた。
出来ることなら、もっと
動けたらとも思うのだ。
若干湿った外の世界は静かなのに
混沌としている。
一歩、また一歩、心は雪のように
冷たい。
身体は、熱い。
それなら、まだ死んでいなかったのだろうと
思う。抜け殻みたいなボトルに
水分が溜まっていく。
―目は覚めたか。
水は押し寄せる。途端に部屋の中で
水かさは増す。もがく、息が出来なくなる。
ざぷん。水の中に入ってしまえば
瞼も開けれなかった。
そう、昔から水が苦手だった。
お風呂の時だって怖かった。
息も出来ない。苦しい。
それでも必死にもがく。
まだこの状況でも生きたいと願うのか。
もがいて、もがいて、
泳ごうとした。手も足も掻きながら
次第に瞼を恐る恐る開けた。
もしかしたら泣いているのかもしれない。
こんなに、こんなにまでなっても、
生きたいと願うなんて。
手を伸ばす。僅かな隙間から射す光は
霞んでいる。ぼやけている。
あの場所に辿り着くことはもう少しで出来た。
あの場所に辿り着いても
僕はどういうふうに生きていけばいいかわからない。
それでも、必死に手足を掻いた。
光が見えてきた。
光じゃない光。
僅かな光だったが、それは光なのかもわからない。
ここで助かっても幸せになれるかわからない。
このまま沈むことも考えた。
―目を覚ませ。
次第に体が勝手に動く。
光へ、光へ、まっすぐと。
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