音は色褪せることがなかった
2018/10/22


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きらきらと瞬きをする、教室だ。
肌色のカーテンゆれていた。
次第に鍵盤を奏ではじめた。
一斉に歌い始めた、
ざわりと心が震えた、
意識はどんどん深くのめりこんでいく、
歌声と教室のピアノの音が体中を支配した。
あのまっすぐな瞳。
「ここに、いたんだね。」
彼女はその教室の一番後ろで眺めていた。
やさしい音が次第にやってくる。
ここにいた確かなこと。
気が付いたら瞳は濡れていて
ベッドの上にいた。
容広げて生きていくなら
2018/10/20


何もいらないはずだった、
だけど抱えているかけがえのないものが
あまりにも多すぎた、
いつしか選べなくなっていた。
どう考えても行き着く答えはわかっているのに
受け入れられない、
それなら全て抱えて生きていったほうがいいと
乾ききった心を潤してくれたことを
胸に刻みながら、光をくれたことを
想う。
抱えきれないのなら、自分の心を
もっともっと広げていけばいい。
この世界に身を任せながら
2018/10/05


風の季節の訪れ。10月はやってきた。
ゆっくりと自転車を漕げば
道路わきに花たちがたくましく伸びていた、
涼やかな空気、焦げるような田畑の匂い、
久しぶりに見上げた空は
高く、高く澄んでいた。
もう深呼吸はいらない、道しるべもいらない、
背中を押す風さえも。
育ったこの場所さえ
感じなかった。
全て感じなくても、走らなくても
魂を注がなくても、
考えながら生きていかなくても
もういいでしょう。
すっと手を伸ばして
足をふわりと浮かせたら
いつの間にか世界と一緒に生きていたのです。
君は招いた、私は誓った。
2018/09/02


その光は、幾つもの陰りを
やさしく照らした、鳴らすようでもあった。
夢の中で君は、私に今でも諭すように
現れて、喉の乾きをうったえて
横たわる。翳りゆく夢はそうして
哀しいほどに広がる、めくるめく景色は
残酷だ。
今でも蘇る、
あの日は、尊くて、大切で
この光を消さないように
控え目なやさしさをつくった。
濃き色は哀を溶かした
2018/08/20


薄く色付いた紅色やオレンジ色のあの日々が
いつまでも自分を苦しめた。
跳ねてもぐんぐんと走っても平気だった頃、
何色にだって染まって私は何も知らないまま過ごした。
幾つも春が過ぎて夏も過ぎて
明日も明後日も過ぎて気が付けばまた春に戻った。
いつまでも苦しめた。
今日、この場所で瞼を開けていたら
あの日々を重ねていた。
同じようで全然違う、だけれど何重にも
あの日々を忘れるぐらいに
色は重なって濃くなって、
本当に幸せだった。