春の嵐は貴方を連れてきた
2021/03/30
水が、下半身を覆う。
水はだんだん高さを増していく。
すごい雨だ。
自転車でなんとか逃げ切ったら
白い花束のあなたは待っていた。
そこで貴方といくつかの話をした。
水の中を越えてまた道路を
自転車でこいでまた元の場所に戻る。
白い花束の貴方はまるで
水の中の現実では行けない場所まで行ってしまって
もう体のある状態で
会うことはできない。
私は幸せになっていいのか。
貴方の夢を見るたびに思う。
目が覚めたら春の嵐が
一面を濡らしていた。
この上ない喜び悲しみ
2020/10/24
やがて着地した世界で
すべてを燃やしている私がいる。
すべてこの燃えてしまった炭になったものは
目を閉じて、遠い遠い昔のことにしよう。
あまりにもかなしすぎるから
あまりにもつらいことを思い出しすぎるから
自分だって変えてしまって
生き方だって変えて
自分の神様さえ代わってもらって
目を閉じて、すべて君たちはいなくなったと
この世にいないことにした。
けなされて、けなしてきたこの言葉たちが
いつまでも棘を刺して
ずっとそこから抜けない。
だけれど深い棘を思い切り抜いて
私は強く向こうへ旅立つ。
いくら血まみれになっても構わない
この刺を海に葬る。
いくら血まみれでも痛くても
目を覚ませば嬉しくて泣いてた。
泣いてたんだ。
命の鼓動は聞こえているか
2020/09/27
忙しなく溢れ返った言葉の海に溺れてしまって
どこまでも流された。
それは戦争のない世界なのに
まるで心の戦争みたいだ。
幻のあなたは言う。
この世で一番大切にすべきものは
言葉だ、と。
それは心の中でも現れるものでも
昔の私だって今なら知っていて
幾つもの隔たりを感じながら
今何をすればいいか自分に問う。
―命の鼓動は聞こえているか。
―破裂してしまった命のことを忘れるな。
―遠い君がそうだったように。
白い花束は私に教えてくれる。
もう間違えては、いけないと。
私の選択。
2020/09/17
目まぐるしいほど
手や足を動かしていた、
9月。それは置かれたレールから、
自分で選ぶレールに線路を分岐した。
私は旅をする人だ。
ここから先は自分で何もかも選んでいくのだ。
手や足や、耳を澄ませながら
ぎらぎらと瞳を光らせながら
静かに厳かに一歩、進んでいくのは
もう不安があっても
これが現実であることを
受け入れたのだから
幸せになることを恐れることはもうないだろう
振り返ることもあれば薙ぎ払うこともあった、
燃やし尽くすこともあった。
壊し続けることも、葬ることも、
自分の心だって殺してきた、
そういう風に沢山のことを選んできたのに
今私は幸せになろうとしている。
訳がわからないほど叫んだ日は
途切れないのに
それでも進もうとするのは
強い声が、強い鼓動が
そこへ行け、と背中を押しているからだ。
誰よりも飛び立つ心があるなら
2020/07/29
終わらない、すべては終わらないのだ。
ずっとここから
どこまでも続いてゆく。
いくつもの振動を成した音たちは
瞬く間に騒がしく鳴り始めた。
その途端空気が変わって
彩りの幻想が浮かび上がった。
滑走路を駆け始めて、
今、飛び立とうとしている。
確信に近づいた私たちは
どこにいても
信じ続ける、
終わらないレールがずっと彼方まで
続いてゆく。
ゆこう、ここから何十年も
私たちはずっと
ずっと、
ずっと、一緒だ。
information gets complicated
2020/02/26
絡み合った糸が解けては
またほかの糸と絡み合い
またそのほかの糸と絡み合い
沢山の糸が絡み合っていく。
そんな中でただただ、佇んで
傍観するしかなくて。
錯綜する、混沌とする、
どんどん、どんどん加速を増していく。
かなしみの糸がどんどん絡み合う。
糸はどんどん、どんどん
絡み合う。
私はただ今その糸に絡まれないように
その糸を触れないように
ただ、ただ自分の中にある糸をしまっておくのだ。
2月29日、予感
2020/02/26
2月29日、野里市では閏年イベントのために
全ての学校が休日になり、人々は三連休を楽しんでいた。
しかし、その朝自宅の郵便受けに
直接入れられていた手紙に書かれていた
奇妙なメッセージに導かれるようにして、
四人の少年少女は
それぞれに町へと駆け出していく。
2月29日のうちに、彼女が何者なのか、
彼女がどこにいるのか探してください。
次に探せるのは4年後の2月29日です。
四人の少年少女の許に届いた手紙に記された
『彼女』とは誰なのか?
手紙を送ってきたのは何者か?
何故選ばれたのは彼らなのか?
何も解らないまま、彼らの2月29日が始まった――
☆granat様、
2016年完成予定、同人ADVゲーム「229」の
音楽担当しております。
この楽曲は、メインテーマ曲となる楽曲の
アレンジバージョンとなっております。
宛てもなく彷徨う少年少女たちをコンセプトに
メインテーマ曲を制作し、
いくつかアレンジ版楽曲も提供させて頂いております。