空中ブランコに寄せて
2017/02/05
決して楽しくはないこの場所で
唯一乗れる空中ブランコは心を癒してくれる。
憂鬱な気持ちは風に運ばれて
ぴゅうっと廻った、
そうして加速する、吹かれては瞼をとじて。
海は笑うようで
2016/10/15
「また、海を見てたんだね」
海は教えてくれる。ここにいなくちゃいけないと。
ずっと背負い続けなきゃ、いけないと。
夜が来るたびに、黒い闇が迫ってきて、
あの子のことを考えながら、眠りについて、
朝になって、海の音が聞こえて、
あの子のことを思い出して、過ごして。
隠れていた月に、雲がだんだん流れて、
おぼろげに光を帯びて姿を現した。
月が静かに、海へと映って揺らいでいた。
今日も、明日も、明後日も、
苦しみ続けるいつもの風景は、
ゆっくりと動き出していた。
☆2017冬公開予定、
「朝焼けのブルー? - Mezzo forte episode -」より。
ほんとうのことをはなそう
2016/06/17
ほんとうのことを、はなそう。
踏み出せなかった一歩が、ようやく踏めたその日、
私は大切なことをおもいだした。
傷ついて、伝えることすらおびえて
かくして、にげて、そうして誤魔化して
ほんとうのことを言えずにいた。
怒った私を殺して、なかったことにしてた、
ほんとうのことをはなそう。
今度こそ、大切な誰かを傷つけてしまう前に。
ほんとうのことをはなそう。
ほんとうのこころ
2016/06/10
この顔もこの顔もすべて私なのに
すべて私なのに私じゃないのはなぜ?
ほんとうのこころを開けられないでいる。
ほんとうのこころを曝け出せば、
私は人を傷つけるだろう。
ほんとうのこころを曝け出せば、
嫌な気持ちになるだろう。
ほんとうのこころなんて、
曝け出した方が苦しいのだろう。
私が鬼のように立ち向かって
怒っている夢を見た。
朝起きたらわたしはまたいつものように
普通どおりの顔をしていた。
夜がきたら、私は至るものに怒り続けた。
☆2014年製作の「ほんとうのきもち」の
姉妹曲です。
守る朝
2016/06/02
朝、体が震えているので、君にそのつらさを
おしえてあげた。スコールの明けたその日、
アスファルトはすでに乾いていた。
それでも体が震えるのは、この朝の冷え込みのせいか、
あなたに、ぞわりと近づく明日への不安だろうか、
とにかく今すぐあたたかい
マスカットティーを淹れてあげよう。
朝、体が震えているので、君にあたたかい紅茶を
いれてもらった。フルーツのかおりがして、
砂糖を幾つも入れた。
あなたはうつろな目でぼうっとマスカットティーを口にした。
まだ目も覚めていないのだろう。
朝、体が震えているので、君は自分の手を
ぼくの手にそっと置く。ゆっくりと隣に腰をかけて、
やがてしばらくして、小さく口を開いた。