風の泳ぐ街 - Town the wind is swiming -
2013/07/02
(ピアノソロ)
風を泳いだ、小麦畑を眺めて歩いた。
神社でお祈りをして、二十五円玉を入れる。
まだ私が小学生の頃通学路にしていた通りを
赤い自転車で抜ける。
動いていく、雲も、花も、大地も、風が通り過ぎていく。
生きている感覚を体の至る所で探った。
感覚は、もうなかった。
汗をびっしょりかいて、今日を生きる。
潤いの夏- Summer of moisture -
2013/07/01
開けたばかりのコーラ、ガラスのコップに注いだ。
小さな気泡が上昇していった、夏が来た。
夏に負けてしまった身体と心を横たわらせる。
近頃は、膝をカクンと立ちくらみばかり。
心の波は激しく打ち寄せたり、引いたりしていく。
わたしはこの夏を過ごす。
六月のひかり-Sunlight of June-
2013/06/27
(ピアノソロ)
黄桃の缶詰のような色をした雲から差し込む光。
横断歩道で待つ人は、たまにそんな光を見据えて、
明日のことや、遠い将来のこと、
家族のこと、恋人のことを、霞んだ心の持ち様にて。想う。
ダ・カーポの朝
2013/06/11
うるさく鳴り響く目覚まし時計を止めた。
目を覚ましたら今日になっていた。
重い体を勢いつけて起こす。今日も一日が始まる。
重たい体を運んでくれる電車は
わずか10分の時間だけ私と共にする。
うとうと、と瞼を閉じたりして、
リュックサックを抱えながら揺れる。
目の前の座席は日当たりがよく、
避けるようにして座った日陰の席。
がらりと、数えれるだけの人が揺られている。
この前と一緒だ、と思った。
今日もなんてことのない一日が
時間とともに流れて、
今日もなんてことなく終わっていく。
それがつらい。
それがつらくて、またうるさく鳴り響く目覚まし時計を止めた。
目を覚ましたら今日になっていた。
今年の夏、さよなら(7つの調べ)
2013/06/03
全7曲構成。
訪れ
(訪れ)
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22度目の夏を迎えた。風はなく、蜃気楼には遠い。
アスファルトに熱がこもって、僕の視界もやがて溶けていく。
入道雲はゆっくり流れていた。時間もそうして流れては、いく。
誰かの手を放しても、誰かに手放されても、
遠いどこかで誰かが殺されても、
病で誰かが死んでしまっても、
流れていくんだ。
夏も、見えない風も、
僕も、
石ころも、明日も、今も、くだらないことも。
過去
(過去)
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紙ヒコーキ、飛ばしたね。夏の匂いが、したね。
川、落っこちたのは、私の心だったの。
トンボが、かなしくおよいでいるのは、夏だから。
身体中感じるのは、夏という温度や湿度、
耳を澄ましたらきこえる音。
また、もう一度、手紙を書いて、
あの川に紙ヒコーキ、飛ばしますね。
覚えていてください。
日々
(日々)
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あっ、動いた。動かないで。シャッターを切る。
レンズに写った君の顔、おかしい。思わず、笑ってしまう。
夏はだんだん、だんだん苦しいほど、暑さを増していく。
冷房の効いてる場所で、冷たい水をくちに運ぶ。
レンズにおさめた時はずっとずっと、夏のままなのにね。
ずっとずっと、そのままなのにね。
倦怠
(倦怠)
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気だるさ、嫌気のさすような、明るすぎる光。瞼を閉じる。
食欲もなくなってきている。
それでも動いている、時間と太陽と、
聳える雲と、光も、僕さえも。
だんだん、だんだん、この暑さにも慣れてくるんだろうか。
焦燥
(焦燥)
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カレンダーめくり忘れてるよ。めくっておこっか?
海に溺れたような息苦しさ、
視界には君がいる。セミが鳴いてる。
うるさい。セミが、君が、うるさい。うるさい。
泡を吹きそうな、気持ち悪さ。
風が開けっ放しの窓から吹いてきた。
カレンダーがめくれる。めくれて、
また先月のページに閉じられた。
幸福
(幸福)
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「―――――――――――――――。」
終り
(終り)
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その日は雨。22度目の夏の終りの音は、聞こえている。
雨も、流れていくんだ。
僕はもうすぐ、こんな風に夏を過ごすのは最後だとか、
思ったりするんだ。
雨はいつだって、やさしい。
雨はいつだって、つめたい。
雨が止んだら、また僕は、流れていきます。
これらの文章を読んでくださって、
もしかしたらわかる方いらっしゃるかもしれませんが、
僕、夏が好きなんです。