やがて秋はやってきた
2023/09/23
オレンジやピンクのコスモスの
揺れる川沿いの道をゆっくりと歩いた。
傾き始めた日差しは川に反射し
揺らめく光がきらりきらりと輝いた。
ずっと先まで行けば
彼岸花が赤く道を彩っていて
すすきはやさしく揺れていた。
虹色の詩
2023/08/27
ある日照りが強い頃、
夢中になって打ち込んでいた。
それは楽しくて仕方がなくて
出来上がったら嬉しくて
幸せで溢れていて
雨が降っていた頃は
よく出来上がった後のことばかり
考えて誰もが振り向いてくれることを
願って願い続けて
結果ばかり見て落ち込んでいた。
ある日照りが強い頃、
そこに少しの涼やかな風が運んで
秋の気配を感じた。
気温も下がれば
陽気なステップでまた踊れるだろうか、
そっと素足を一歩前に出せば
初めの頃の私が楽しそうに夢中になって
打ち込んでいる姿があって
瞼を閉じた。
ある雨上がりの頃、
虹が淡くかかって
ぼんやりとだが、少し歩いていけるような気がした。
まだぼんやりとだが、頑張れる気がした。
虹はかかっていてもまだ雨は止まないが、
きっと次第に晴れるだろう。
ある日照りが強い頃、
夢中になって打ち込んでいた。
それは楽しくて仕方がなくて
出来上がったら嬉しくて
幸せで溢れていた。
命
2023/07/01
とても、とても小さなカエルが跳んでいた。
懸命に飛んでる姿を
じっと、私は見つめた。
雨はずっと降っていた。
電話の後だった。
ずっとずっと雨が降っていて。
想いを遠く、遠く馳せた。
叫びみたいな憤りが込み上げて
私に語りかける。
「命を粗末にしていた君が、何故」
身を投げ出したことだって幾度もあったのに。
貴方の命は長いようで一瞬で
気が付いたら会えないまま
立ち上がれなくなって
歩けなくなってしまっていた。
何故生きているという問いは
果てしなかったのに
今こんなにも愛おしい命の数々が
私を見つめていた。
大事な愛おしい命が沢山、
私へ教えてくれる。
"命"を。
穏やかな破裂
2023/06/12
拍手とともに視界は真っ暗になった。
幾度もそれを経験した。
幾度も折れそうになった心を
僅かな光の綱で留めていた。
でも、やがてそれは破裂した。
それは、穏やかな破裂だった。
生き甲斐としてたことをあきらめたら
すごくほっとして、ゆるやかな風が吹いてきて
「それでいいんだよ」って
君は悲しそうに笑った。
拍手とともに視界は薄れていく。
もう何も考えることができない。
何度も頭がショートして
眩暈が止まらなくなって
幾度も可笑しそうに笑って
何かのせいにして
自分の問題ではないって
目をそらした。
拍手とともに視界は何も見ることができない。
ここには私が一人、
ただ静かに静かに自分を外側から
見つめている。
何故だかほっとして
ずっと逃げたかったのかもしれない。
呪いは解けたのに。
なぜだろう、真っ暗な視界が
私を微笑させる。
それは穏やかに。
穏やかに。
熱情は囁く
2023/05/02
風が吹いていた。
確かな風だ。
それは夜のこと。
街灯の少ない道路をカーブする。
信号機が点滅する。
人は歩いていないけれど、
スーパーの明かりが付いていた。
車窓から見える風景の中で
確かな風が吹き付けてきた。
それは、願っていた風だ。
幾度も感動したから
あまりよく覚えていないんだって
きっと訳のわからないぐらい
苦しかったからだって
私はそう笑って
一面に水が張られた田んぼの景色を
助手席に乗りながら通り過ぎていく。
熱情は冷めなかった。
放出した力で身体は燃え滾っていた。
苦しむほどに熱く
悔しむほどに問いかけた、
掻きむしるほど情けない姿で叫んだ、
だからこの風が
あまりにも涼やかで
あまりにも確かだと
そう、思ったんだ。