夜影はまどろみに消えて
2017/06/08

夜、明かりがぽつぽつと点り始めた。
町は、静けさをまといながら
人影は、ゆらゆらと走りながら
時計塔は、鐘を鳴らしながら
夜の訪れを、まどろみのように感じていた。
夜から朝へ (二部編成)
2017/02/20

「夜の水槽」
夜の水槽[download id="629"]
「なにを焦っているのだ、
君は、大切なことを約束しただろう、」
自分の中の神様はそう言う。
唸り続けて叫び続けて
夜の真下で獣みたいに鳴いていた。
ただただ滴りながら
吼えて、狂い荒れながら
自分の中の神様は語りかける。
「もう話しかけるな」
そう放てば、神様は黙る。
黒い黒い明かりのない場所で
そこにいることが今の自分にとっては
許しにもなるだろうと思う、
暗い暗い闇の底まで沈んで
遠く遠く吼えていた。
「どうしてか、」
どうしてか、[download id="630"]
それでも朝は来てしまっていて
こんなに苦しい気持ちも
少し引きずるものの
はじまりの世界では
気持ちを入れ替えて正していかなくてはならない。
コップに水を入れて、口の中を潤して
一日は始まる。どんな怖い夜がきたって。
また飛び立つ日のために
2017/01/06

なにを描きだしても本当の世界にはかなわない、
こんなにも笑って声をあげるほど泣いてしまうことが
そして目が焼き付けるほどの眩い風景が
いとしくて、あなたは世界を色付ける。
描き出すことの全てが今は果てしないこの世界には
かなわないと知れば
私のいくべきみちは、桃色や黄色や
緑色や水色に輝く、どしゃぶり雨の瞬くもとで
教えてくれる、あの場所へまたゆくひのために
どこにもいない君と、
2016/07/20

「ぼくはここにいます」
軽やかなステップで足を急がせた。
まっすぐと抜けた先に、灯りがついていたよ、
ドアを開けると今よりすごく前の
あたらしいぼくのお家の中だよ、
手をあらって、ぼくのへやに上がって
ベッドの上で考えたよ、
ぼくはどこにいるのか、ときどき
わからなくなるから、
ぼくは容なき君としゃべりあって
ぼくをみつけたよ、
ぼくはここにいるよ、
きみはいないのに、
ぼくはいるんだね、
時の航路
2016/06/27

いろいろかんがえたけれど、なにも見つからなくて
なにもない野原でずっと立ちつくしていた。
たくさんのことがわかったのに、
一番わかりたいことが、わかることができない、
きっと、”それ”を見つけるために
いつもこうして生み出してきたのだと思う。
いろいろかんがえたけれど、わたしには
一番だいじなものが空っぽで
透明なボトルのように軽くて蹴飛ばされたら
どこまでもどこまでもとんでゆくんだ。
でも、そんな風にかんがえていても
日常は時速を上げてすぎてゆくのだ、
もうどうでもよくなって、風にふかれて
朝がきて夜がすぎて
いろいろかんがえることの無意味さを
知る。
ただ、進む。それだけで、航路ができていく。
こだわりを棄て、からだを浮かせて
ゆこう、夢をみることをやめて
もっと、ほんものの世界へ。