時の航路
2016/06/27

いろいろかんがえたけれど、なにも見つからなくて
なにもない野原でずっと立ちつくしていた。
たくさんのことがわかったのに、
一番わかりたいことが、わかることができない、
きっと、”それ”を見つけるために
いつもこうして生み出してきたのだと思う。
いろいろかんがえたけれど、わたしには
一番だいじなものが空っぽで
透明なボトルのように軽くて蹴飛ばされたら
どこまでもどこまでもとんでゆくんだ。
でも、そんな風にかんがえていても
日常は時速を上げてすぎてゆくのだ、
もうどうでもよくなって、風にふかれて
朝がきて夜がすぎて
いろいろかんがえることの無意味さを
知る。
ただ、進む。それだけで、航路ができていく。
こだわりを棄て、からだを浮かせて
ゆこう、夢をみることをやめて
もっと、ほんものの世界へ。
ほんとうのことをはなそう
2016/06/17

ほんとうのことを、はなそう。
踏み出せなかった一歩が、ようやく踏めたその日、
私は大切なことをおもいだした。
傷ついて、伝えることすらおびえて
かくして、にげて、そうして誤魔化して
ほんとうのことを言えずにいた。
怒った私を殺して、なかったことにしてた、
ほんとうのことをはなそう。
今度こそ、大切な誰かを傷つけてしまう前に。
ほんとうのことをはなそう。
ほんとうのこころ
2016/06/10

この顔もこの顔もすべて私なのに
すべて私なのに私じゃないのはなぜ?
ほんとうのこころを開けられないでいる。
ほんとうのこころを曝け出せば、
私は人を傷つけるだろう。
ほんとうのこころを曝け出せば、
嫌な気持ちになるだろう。
ほんとうのこころなんて、
曝け出した方が苦しいのだろう。
私が鬼のように立ち向かって
怒っている夢を見た。
朝起きたらわたしはまたいつものように
普通どおりの顔をしていた。
夜がきたら、私は至るものに怒り続けた。
☆2014年製作の「ほんとうのきもち」の
姉妹曲です。
まどろみの中の目隠し
2016/06/06

まどろみの中で、またあなたは現われた。
何も言わず、ただやさしく笑うので
声をかけようとすると、あなたは急に泣きだした。
あなたがなぜ泣いているのか、わからないまま
私はそこで立ち尽くして、眺めていた。
あなたは、そうしてまたやさしく笑う。
あなたは、そうしてまたやさしく笑うので、
私はまたわからなくなって
遠回りするように、とぼとぼとあなたとは遠い世界を
底の低い世界を亀のように歩き続けた。
まどろみの中で、またあなたは現われた。
私は両手で自分の右目と、そして左目を隠した。
守る朝
2016/06/02

朝、体が震えているので、君にそのつらさを
おしえてあげた。スコールの明けたその日、
アスファルトはすでに乾いていた。
それでも体が震えるのは、この朝の冷え込みのせいか、
あなたに、ぞわりと近づく明日への不安だろうか、
とにかく今すぐあたたかい
マスカットティーを淹れてあげよう。
朝、体が震えているので、君にあたたかい紅茶を
いれてもらった。フルーツのかおりがして、
砂糖を幾つも入れた。
あなたはうつろな目でぼうっとマスカットティーを口にした。
まだ目も覚めていないのだろう。
朝、体が震えているので、君は自分の手を
ぼくの手にそっと置く。ゆっくりと隣に腰をかけて、
やがてしばらくして、小さく口を開いた。
春の海辺にて ver.short demo
2016/05/13

春の海辺にて ver.short demo
「ねぇ、どうして」
まだ肌寒い春先のこと。
波の音が聞こえた、カモメの鳴き声も聞こえた。
青年も目の覚めていない朝は、すごく静かで、
浜辺では、淡くやさしく穏やかに時間が流れている。
生温い潮風が、佇むように吹いていた。
☆イラスト:Merrill Macnaut様
マスタリング:マシュー様
6月17日~19日に行われるAPOLLO第四回にて
リリース予定の新作アルバム「少女の海から」より。
ティザーサイト公開中。
特設本サイトは5月末公開予定です。