まだ、あの美しい風景に留まりたい
2017/09/21
ちゃんと持ち帰った筈だった
けれど鞄から取り出したものは
もう全て虚像でしかなかった。
見た景色は全て褪せて、
だんだんこの焼きついた景色も
加速する時間とともに
褪せていく。
褪せても尚、心の中には
確かな形のない証拠が存在していて
私はここであの美しい風景を見てたんだよって
強く、言い聞かせた。
そこにいて、今もいる。
ここにいるのに今いない、
心はまだあの風景の中で
愛しいまま留まっているんだ。
それでいいでしょう、しばらくは
うんと思いっきりいつまでも
ここにいても尚焼き付けながら
もういいでしょう、ってところまで
見てきたら、帰っておいで。
碧の部屋(二部編成)
2017/08/29
(ver.song)
碧の部屋 ver.song[download id="724"]動画版
(ver.piano solo)
碧の部屋 ver.piano solo[download id="723"]
ドアを開けたら誰もいなかった。
ガラクタばかりで、引き出しも開けっ放しだった。
カーテンがゆれていた、そこに腰をかけることにした。
頑張っても頑張っても
何も報われなかったので
その部屋に鍵をかけて
ずっと何も聞こえない場所で
ねむりについた。
この身裂けてしまうまで、踊りをツづけましょう
2017/07/12
繊細に、且つ洗練したその世界に
魅了されて なんとも薄っぺらいわたしは
右手を真っ直ぐとしなやかに伸ばして
滑らかに動かして
左手を反対側へ おどらせて
滑稽な踊りをつねに披露して
つま先を立てて 足が赤く染まるほど
舞いツづけたのだ。
鏡を見て、ふっと笑って くねりと
首をまげて いつまでたっても
狂気に満ちていただろう。
明日むなしい夜がきたって構いやしない、
択んだ道なのなら、とことん枯れはてるまで
この身が裂けるまで
ツづけましょう。
夜影はまどろみに消えて
2017/06/08
夜、明かりがぽつぽつと点り始めた。
町は、静けさをまといながら
人影は、ゆらゆらと走りながら
時計塔は、鐘を鳴らしながら
夜の訪れを、まどろみのように感じていた。
夜から朝へ (二部編成)
2017/02/20
「夜の水槽」
夜の水槽[download id="629"]
「なにを焦っているのだ、
君は、大切なことを約束しただろう、」
自分の中の神様はそう言う。
唸り続けて叫び続けて
夜の真下で獣みたいに鳴いていた。
ただただ滴りながら
吼えて、狂い荒れながら
自分の中の神様は語りかける。
「もう話しかけるな」
そう放てば、神様は黙る。
黒い黒い明かりのない場所で
そこにいることが今の自分にとっては
許しにもなるだろうと思う、
暗い暗い闇の底まで沈んで
遠く遠く吼えていた。
「どうしてか、」
どうしてか、[download id="630"]
それでも朝は来てしまっていて
こんなに苦しい気持ちも
少し引きずるものの
はじまりの世界では
気持ちを入れ替えて正していかなくてはならない。
コップに水を入れて、口の中を潤して
一日は始まる。どんな怖い夜がきたって。