まだ、あの美しい風景に留まりたい
2017/09/21

ちゃんと持ち帰った筈だった
けれど鞄から取り出したものは
もう全て虚像でしかなかった。
見た景色は全て褪せて、
だんだんこの焼きついた景色も
加速する時間とともに
褪せていく。
褪せても尚、心の中には
確かな形のない証拠が存在していて
私はここであの美しい風景を見てたんだよって
強く、言い聞かせた。
そこにいて、今もいる。
ここにいるのに今いない、
心はまだあの風景の中で
愛しいまま留まっているんだ。
それでいいでしょう、しばらくは
うんと思いっきりいつまでも
ここにいても尚焼き付けながら
もういいでしょう、ってところまで
見てきたら、帰っておいで。
雨粒の世界で出会いましょう
2017/09/12

打ちつけた。たたきつけるように
ぴしゃり、と雨粒はアスファルトを踊った。
窓硝子だって曇らせてぼかしていく、
部屋の中は暗い、そういうときは
感傷的になるでしょう、
だから踊り荒れ狂う雨粒をながめて
心だけひゅるりと旅に出るんだ
風に乗って、君と踊った、
ぱち、ぱちと手をたたきながら
足は、とん、とん、とリズムを取って
加速する風景の中で
窓辺の中に世界がある。
その窓に吸い込まれるようにして
悩ましいことも
雨粒に委ねて。いつまでも
踊ればよいでしょう、
赤い花 ver. piano sing
2017/09/12

少女は、”赤の銀河”のユメを見ていた。
満月の夜、月の子どもは
「それは夢だよ、」と
教えにきたのだ。
かなしい夢を解くために
満月で照らしてあげた。だけれど
少女はずっと永くユメは覚めないようだった。
☆2013年製作の弾き語り曲「赤い花」の
ピアノソロバージョンです。
また、同曲は「月の子ども(弾き語り)ver.short」や
「夜の雲が笑う」、「青炎の瞳」や
アルバム「朝を終えるために」より
収録曲「月の子ども」の同系列作品となっております。
存在なら消した、風なら吹いた。
2017/09/06

山吹の風は吹いてきた、
夜、トンネルから抜けてからも
眩暈がした。何も照らすものはなかった、
光を持っていたとしても
それは、”光”ではなかった。
それならば、風に溶けてしまえ
何ともないことで、くよくよしてしまうのなら
自分など存在のしない感覚で
生きる実感を捨て
ただ、手を動かして足など踏んでしまえ、
いない、いない、ここにもそこにも
あしたにもいない、
どこにもいないならだいじょうぶだ。
碧の部屋(二部編成)
2017/08/29

(ver.song)
碧の部屋 ver.song[download id="724"]動画版
(ver.piano solo)
碧の部屋 ver.piano solo[download id="723"]
ドアを開けたら誰もいなかった。
ガラクタばかりで、引き出しも開けっ放しだった。
カーテンがゆれていた、そこに腰をかけることにした。
頑張っても頑張っても
何も報われなかったので
その部屋に鍵をかけて
ずっと何も聞こえない場所で
ねむりについた。
途端、雷とともに雨は降りだした
2017/08/24

ピシャリ、と刺々しい雷が
風景を白、それから黒に
染めて。すぐそこまで追いかけてきた。
渦を巻いている大きな雲も
少しずつ勢いを増している、
息が苦しいぐらい湿度は高く、
体は動かない、雨が降り出してきた、
逃げられない、
その風が近づく、雨音は叩き付ける、
息を呑む、瞬間、走り出した。