隔たれた世界では君が聴こえる
2014/05/12

君の音が、よく聴こえる。
別に喉が渇いてたわけじゃなかった。
烏龍茶のMサイズをファーストフード店の一角で口にしては。
朦朧とした空間の中で小さく君のことを浮かべた。
まるで世界から蹴飛ばされた場所では、
喧噪とした声が刺さるように乱暴に響く。
目を細めては、時計を見て足をぶらつかせた。
君は
2014/04/15

「僕達のいた学校の、終わりの翌日」
山間にある小さな中学校、
朱矢中学校は今年度をもって廃校となる――。
地元の事情から既に下級生達は他の学区へ転校しており、
六人の卒業生とたった二人の先生だけで
『昨日』の卒業式を迎えることになった。
週明けには校内の片付け作業も始まることになっており、
小さな校舎から彼らの痕跡は消えていく。
残っているのは今だけ。
そんな日に起こる、彼らと誰かの何か。
――――『卒業式の後、君は』イントロダクションより
granat様主催、
廃校アンソロジー本「卒業式の後、君は」の
イメージ音楽を製作させて頂きました。
廃校を舞台に、小説やイラストを交えた
遊び心の詰まった、一冊の本を製作しております。
後日、イベント頒布や通販等も行われます。
ラングドシャをひと箱
2014/03/27

思えば、最初から、ラングドシャを一人でひと箱開けるような
女の子だったら、よかったのかもしれないって。
ダメだってことは絶対ダメだったし、
そのまま生きてしまったのがよくなかった。
だから、今日はラングドシャをひと箱開けてむさぼるように、
食べよう。それがいいんだ。ほんとうに。
変わりゆく季節の狭間で
2014/03/23

こころでおしゃべりするには、こころが狭すぎた。
からだが崩れていく、それでいてこころは冷静でいた。
外の冷たさが、瞳の中にしみこんでいくようにして
おとずれたのは春という今日。
空いた分だけ抜けていったきもち。忘れてしまったこと。
だけれど、その分だけ強く生きれるような気もした。
水たまりを避けるようにして歩いたら、
ちょっとした場所で躓いて転んだ。
忘れないで生きていくにはあまりにもつらい。
忘れてばかりではあまりにも残酷で。