私と言葉と
2019/04/17
「お前はなんのために言葉を、紡ぐのだ」
老人は、そう言う。
自分のため。誰かのため。
いや、誰の為でもないのかもしれない。
そこに、意味は成してないのかもしれない。
言葉と初めて向き合ってから
幾つもの時が流れて、幾つものの
呼吸のしにくさを感じた。苦しさばかりだった。
「こんなに大切に、言葉を、できないのなら
言葉などいらないです」
言葉はあるとき他人を傷つけた。
言葉は跳ね返って自分を苦しめた。
そんな言葉なら、言葉などいらないと願った。
口を塞ぎ、目を閉じて、だけれどそれは違った。
そのことにある日を境に気付いた。
「言葉は、苦しんだり、他人を傷つけるものではないのだ」
言葉があるから、生かされたり、
誰かに救われたこともあった。
言葉が自分のためになることもあった。
「言葉は、ただの、道具だ」
一瞬、一瞬、ガラクタのような文字列が心に転がっている。
一瞬、一瞬、私は言葉を使って、
私も、世界を、少しでも楽に、
少しでも幸せにできたら
自分の心が、全てをあらわしている。
心から綺麗に洗浄して、
いきましょう、わかったのなら、もう口を塞ぐことはない。
ゆこう。